
こんにちは。
京焼・清水焼コトポッター、店主の横山です。
日本文化に深く根差した茶道。
抹茶碗は、単なる道具ではなく、美術品としての美しさや茶道の精神を映す重要なアイテムです。
ただ、その格式高さが選ぶ際のハードルになり、種類の多さに迷ってしまう方も多いのではないでしょうか?
陶器屋として多くの方の抹茶碗選びにアドバイスをしてきましたが、以下のようにお伝えすることが多いです。
- お茶会やお稽古では、流派の方の意見を参考にする
- カジュアルな普段使いなら、気に入ったものを選ぶ
お茶会やお稽古では、流派によって「格式」が決められていることがあり、それに沿わない抹茶碗は使えない場合があります。
一方、お抹茶の味が好きで普段から嗜んでいる方や、これから日常に取り入れてみたい方は、自由に選んで大丈夫だと考えています。
それこそ「キレイ」「かわいい」「かっこいい」「手ごろ」など、直感で気に入ったものを選ぶのが一番です。
今回は、「普段使いの抹茶碗の選び方」というテーマで、カジュアルに選ぶ際のポイントを解説していきます。
1.抹茶碗の形状による違い
抹茶碗には、使いやすさや季節感を考慮したさまざまな形があります。形状ごとに適した季節や使い方があるので、参考にしてください。
椀形(わんなり)

- 特徴 : 一般的な形で、手に馴染みやすい
- 季節感 : 通年使える形状
- 使いやすさ : 茶筅を動かしやすく点てやすい
- ポイント : 汎用性が高く日常的に使える
筒形(つつなり)

- 特徴 : 高さがあり、見込みが深い
- 季節感 : 冬向き。保温性が高く冷めにくい
- 使いやすさ : 茶筅が動かしにくく慣れが必要
- ポイント : 寒い季節やゆっくり楽しみたい方に
平形(ひらなり)

- 特徴 : 口が広く、浅めの形
- 季節感 : 熱がこもりにくい夏向き
- 使いやすさ : 茶筅がよく動くため使いやすい
- ポイント : 暑い季節にぴったり
抹茶碗の形状は大きくこの3種類に分かれますが、他にも「鉄鉢」「半筒」「馬盥(ばたらい)」などたくさんの種類があります。基本的には、
- 深い形状は保温性があり冷めにくい
- 平たい形状は冷めやすい
- 深い形状ほど、抹茶を点てるのに慣れが必要
と覚えておくとよいでしょう。
2. 抹茶碗の焼き物の種類と特徴
抹茶碗は、焼き物の種類によって見た目だけでなく、使いやすさも異なります。
天目茶碗(てんもくちゃわん)
天目茶碗は、中国・宋代の「建盏(けんさん)」が起源の黒釉の茶碗です。格式が高く、武家茶道をはじめとする伝統的な茶席で用いられてきました。

- 特徴 : 黒釉の深い色合い、釉薬の変化が美しい
- 使いやすさ : 茶筅が動かしやすいが重量がある
- おすすめ : 格式を重んじる特別な茶席に
- ポイント : 陶芸家によって表現方法が様々。
一楽、二萩、三唐津
「一楽、二萩、三唐津」は、茶の湯で重視される抹茶碗の格を表した言葉です。渡来品であった天目茶碗や井戸茶碗に並んで、日本で作られた「楽焼、萩焼、唐津焼」の茶碗が特に茶人に愛されてきました。
楽焼(らくやき)

- 特徴 : 手捏ね成形、低温焼成の柔らかな質感
- 使いやすさ : 軽く手馴染みが良いが欠けやすい
- おすすめ : 温かみのある器を求める方に
- ポイント : 茶道文化を感じられて実用性も高い
萩焼(はぎやき)

- 特徴 : 素朴な風合い、使うほどに色が変わる
- 使いやすさ : 手に馴染み、茶筅の動きもスムーズ
- おすすめ : ゆったりとした時間を楽しむ方に
- ポイント : 使用感とともに愛着が湧く一品
唐津焼(からつやき)

- 特徴 : 陶器らしい風合いと多彩な表現
- 使いやすさ : 凹凸があるモノは慣れが必要
- おすすめ : 伝統の茶碗を使いたい方
- ポイント : 素朴な美しさが魅力で日常使いにも
仁清風色絵抹茶碗(京焼・清水焼)
江戸時代の陶工・野々村仁清が確立した「色絵」の技法を用いた華やかな抹茶碗。京焼・清水焼の代表的なスタイルのひとつです。

- 特徴 : 貫入が入った乳白色の地に鮮やかな色絵
- 使いやすさ : 凹凸がなく茶筅がスムーズに動く
- おすすめ : 季節感やデザインを楽しみたい方に
- ポイント : デザインや価格帯は様々
まとめ

抹茶碗にはさまざまな種類があり、伝統的な背景も魅力のひとつです。
ですが、敷居の高さを感じる必要はありません。
マグカップや服を選ぶように、直感で気に入ったものを選ぶのが一番です。
生涯手元に置きたくなるような、お気に入りの抹茶碗を見つけてみてください!