守り神、鍾馗に命を宿す
陶芸家 吉田瑞希
京都・東山の工房で鍾馗(しょうき)像を作り続ける陶芸家、吉田瑞希。
鍾馗は、中国の道教に由来する魔除けの神。
その長い髭、官人の衣装、剣を手にした姿には力強さがあり、日本でも古くから信仰されてきた。
雪舟・鍾馗図。江戸時代
(出展:Colbase https://colbase.nich.go.jp)
大学時代、吉田は京都の町屋の屋根に飾られている鍾馗像を見てその存在感と威厳に魅了され、鍾馗の文化継承と作陶に全力を注いだ。
陶器神社として知られる五条若宮八幡宮の中に鍾馗神社を設立するために呼びかけ、その実現に尽力した。
鍾馗神社にある人の背丈ほどの大きな鍾馗の像は、吉田が大学時代に制作したもので、伝統技法を駆使しつつ、試行錯誤を重ねた末に完成した。
そして今も伝統的な鍾馗像を陶芸という形で現代に蘇らせている。
吉田は手びねりや型起こしを駆使して、一つひとつ丁寧に鍾馗像を作り上げる。
吉田の作る鍾馗像は、その伝統的な威厳のある姿はそのままに、陶器ならではの柔らかさや温かみが加わり、独自の魅力を持つ作品が生まれる。
工房は清水寺のほど近くにあり、若手陶芸家たちが集まる共同の作業場と窯を共有している。
陶芸を志す仲間とともに和気あいあいとした雰囲気の中で、制作が進められる。
作陶だけにとどまらず、鍾馗文化の普及にも積極的に取り組み続けている。
毎年、鍾馗神社で行われる鍾馗祭にも関わり、地域に息づく鍾馗文化を未来へ繋ぐ役割を果たしている。
吉田の鍾馗像は、屋根を飾るだけでなく、玄関やリビングに置いてもその存在感を発揮する。
家族や空間を守る力強さを持ちながら、日常の中に伝統美を静かに添える作品だ。
瓦屋根が減りつつある今、吉田瑞希の鍾馗像は現代の暮らしに新たな形で息づいている。
吉田瑞希 陶歴
2014年 京都造形芸術大学 美術工芸学科・陶芸コース 卒業
2016年 京都造形芸術大学大学院 芸術表現専攻・総合造形領域 修了
2017年 京都府立陶工高等技術専門校 やきもの成形科 成形コース 修了
展覧会歴
2015年 個展「土地のうつわ」(うの家)
2016年 個展「一期一会 吉田瑞希陶展」(下鴨亭)
2017年 京都造形芸術大学OB・OG陶芸展「ing..."手のひらGIFT"」(GALERIE h2o)
2018年 京都造形芸術大学 美術工芸学科 総合造形コース セラミック工房
「同じ窯の位相『うつわ』」(ギャラリー久里)
2018年 個展「吉田瑞希 陶展」(大丸京都店)
2018年 京都造形芸術大学OB・OG陶芸展「ing..."日々のおとも"」(GALERIE h2o)
2019年 京都造形芸術大学 美術工芸学科 総合造形コースセラミック工房
「同じ窯の位相『器とオブジェ』」(ギャラリー久里)
2019年 「港南陶芸部30周年OB記念作品展」(港南造形高校)
2019年 京都造形芸術大学OB・OG陶芸展「ing..."初心のどんぶり"」(GALERIE h2o)
2022年 個展「吉田瑞希 陶展」(宝泉院)
2022年 一期一膳(宝泉院)